小説読んだ
■綿矢りさ「しょうがの味は熱い」(「文学界」8月号)
小説よりも外見が好き、というりさたん萌えなので読んでみた。
ずいぶん緩い作品。
20代半ば過ぎ、同棲する男女のすれ違いを描いているが、それぞれのモノローグが冗長。
とはいえ、「仕事中心の男」と「大学院在籍、〈生きがいは彼氏〉の女性」の話は、見に覚えがある(「生きがいは彼氏」ではなかったけど)。つまり、登場人物と同年代の読者であるわたしにとって、この小説が描く男女の関係の「緩さ」みたいのは、近しいものだ。
- 「おれはお前に(生活・信条などを)合わせないよ」と言い切る男のエゴや、「生きがいは彼氏」と言ってしまう女のエゴ。(男は突然ひとりで海外に旅行に行ってしまうのだ! これ、やったことある。)
- 同棲してても結婚する気はない。
- 男:仕事中心の生活といっても、それが「生きがい」ってわけではない。
ここらへんの感じ、じぶんと重なるなあ。
もっと刈り込んでつくったらいい作品になっただろうに。
それはそうと、この作品のりさたんの文章は、Jポップの歌詞みたいだ。
たとえば、
背を向けて眠ったあなたを暗闇のなか眺めて
あなたに内蔵されたい
あなたの身体大きいから私を十分まるめこめる
いつも一緒 暖かい内側 直に響くあなたの声 あなたに守られる
同じ物を見、同じ気分でい続ける
それが無理なら 私が死んだら 骨のかけらをあなたの身体に収めてほしい
いつもついでた左手の薬指 の骨 そしたらあなたに内蔵されて
カルシウムになれる
私あなたのカルシウムになりたい(p.32)
「あなたの身体大きいから」や「私あなたのカルシウムになりたい」あたりの助詞を省いた文、文章全体のリズムとかが、歌詞っぽい気がするのか。
りさたんの関心は、文芸誌の読者には向かっていない気がする。こんなオッサン臭いメディアとは縁遠い若いひとを対象にしてるんじゃないかな。
この作品がエンタメ小説だ、とは言わないから(エンタメにも失礼なので)、別の媒体を選んだらよかったんじゃないかなあ、と思う。
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